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【新島塾】「読書から始まる知の探究」服部先生セッション(3日目)

'22年4月22日 更新
同志社大学新島塾「読書から始まる知の探究」福島フィールドリサーチ3日目
 4月6日(水)フィールドリサーチ最終日。本日は、小高工房の廣畑裕子さん、小高ワーカーズベースの和田智行さん、あすびと福島の半谷栄寿さんに講演していただき、対話を通じて学びを深めた。

 小高工房の廣畑さんは、震災後のコミュニティ再生に貢献し、現在は、人々に交流の場を提供しながら、小高区で栽培した唐辛子を販売している。廣畑さんのお話では、初めに、震災直後の交通状況、津波状況など、「あの日」の様子を語ってくれた。臨場感を伴う語りであり、塾生は当時の緊迫した状況を疑似体験できた。そして、廣畑さんが現在の唐辛子栽培にまで辿り着いた経緯を時系列に沿って語ってくれた。全体的に、廣畑さんの話からは、地域のつながりを再興し、地域に価値提供をするという意識が窺えた。
 小高ワーカーズベースの和田さんは、「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」というミッションの下、事業を行なっている。地震・津波・原発事故という不条理に襲われた後の地域づくりに関して、和田さんは、限りない可能性を感じており、予測不可能な未来を楽しむという精神で地域ビジネスなどを担っている。また、地域づくりに関して、小さくても多くの事業を根付かせることで、自立した地域社会・風土を養い、新たな不条理に襲われても、新たに立ち直れる地域を目指している。町づくりにおけるビジネスモデルを考える上で、非常に示唆のあるお話であった。
 半谷さんには、特に現代に求められるリーダー像に関して、自身のリーダーとしての長い経験を基にお話し頂いた。「普遍な志×可変な手段×思考を追求×実行の連続×煩悩を上回る誠実さ、が組み合わさることで賛同者が現れ、志が実現される。これからの社会に必要なリーダーは、以上のことを踏まえたリーダーだ。」と仰っていた。人々を巻き込むのではなく、人々が自らついていくという点に意義を感じられた。
御三方の全体講義の後、塾生が3グループに分かれて、より具体的な対話を行った。以下は、グループの代表者の感想である。

 廣畑さんとの対話では塾生が順番に質問した。
 人がつながる過程で大事な要素は何か、という質問には、「少しでも共通の話題を意識的に作るために、自分のアンテナをどれだけ高くはるかが重要」と話されていた。広島の豪雨を経験した塾生からは、災害を前に何もできない時、一歩踏み出すにはどうすれば、という質問が出た。廣畑さんはこれに対し「災害や戦争は明日の計画が全てなくなってしまう。けれど、今目の前にあることは自分で変えられる。ご飯をしっかり食べるなど、今日1日をきちんと生きることが大切」と仰っていた。自然と人間の共生について質問した時には、餌付けする人間がいなくなっても飛来地に訪れる白鳥を取り上げ、「自然は人間の考えているようにはならない、人間の側からだけでなく、自然の側から見ることがあってもいいのではないか」という趣旨の回答をいただいた。また、「地元への愛着」に関しての質問に対しては、人口の多い都心と少ない地域を比べながら、「地震がきたら、初対面でも隣の人と手をつながないと助からない。そんな時、誰か声をかけてくれる場所の方が安心」と、周囲との繋がりがある地元の良さを話されていた。
 廣畑さんの全体のお話を通して、自分と対話し、その上で人や自然に対してじっくり向き合っていくということの大切さを感じた。(松本)

 和田さんは、株式会社小高ワーカーズベースの他にも、一般社団法人パイオニズム代表理事、起業型地域おこし協力隊「Next Commons Lab 南相馬」事務局の管理運営等幅広く活躍されているリーダーである。そんな和田さんとともに、ビジネスの視点から本セッションのテーマである「都市の持続性」について議論した。
 40分にわたる対話を経て、和田さんは地域のつながりを重要視されているように感じた。コーワーキングスペースや、別業種の社会起業家同士が交流するNext Commons Labの管理運営に込める熱い想いを語って頂いた。中でもつながりに関して印象的だったお話は、たまたま食堂にやってきたガラス職人とのつながりから、ハンドメイドガラス事業アトリエiriser-イリゼ-が始まったというものである。小さなつながりから生まれる大きな可能性を和田さんのお話から感じることができた。
 ビジネスという要素は持続性に深く関わるテーマである。今後のセッションで、和田さんから得たヒントを最大限に活かしたいと思う。(山口)
 
 半谷さんとの40分間の対話では、このセッションの大きな目標である「都市の持続性について考える」から着想を得て、あすびと福島における持続性や人の連鎖について、塾生が事前に考えてきた質問を基に、議論を交わした。「大学生になって福島を出ていってしまう人材に福島に帰ってきてもらうためには?」という質問には、「あくまでも場づくりであり、強制はできない。その中で福島に向き合うフロントランナーが現れると憧れの連鎖が起こる。福島の創生は軸だが、そこからさらに日本の創生につながれば。」と話された。また、あすびと福島における先端技術の活用に関する質問については、「成長の場づくりのための手段であり、それ自体を目的にするつもりはない。」と本質を共有することへの強い信念を感じる返答をいただいた。あすびと福島で学ぶ層の震災経験の有無については、「モチベーションの向きの変化」という非常に興味深いお話をいただいた。東日本大震災を経験した層の「福島に貢献したい」という「戦時的」なモチベーションと、経験していない層の「楽しそう、先輩方がかっこいい」という「平時的」モチベーションは、最終的に同じ志に行き着く。それこそが「憧れの連鎖」だというお話しであった。
 対話を通じ、人材育成とその土地の持続性について、何かこちら側が仕組みやシステムを提供するのではなく、むしろ場所と理念の共有が重視されるという大きな発見ができた。(大野)

 最後の締めくくりとして、半谷さんを初めとするあすびと福島の代表者、服部先生、塾生が輪になって、各塾生が学んだことを言語化して発表した。一部の塾生の発表を紹介すると、「人によって復興中の町に対する印象が違った」、「震災と自分との距離感が初めてちゃんと理解できた」、「つながりを作る前に、自分と対話することが大事である」など、今回のフィールドワークでそれぞれが学んだことは多様であり、塾生は言語化を通じて、学びを自覚できた。今後の服部セッションにもつながる発表となった。

 今回の福島へのフィールドワークは、あすびと福島の全面協力の下実施された。福島の現状を体感できたことは、今後の学びにおいて、非常に有意義であった。
 最後になりましたが、福島を訪問するプログラムを提供し、時間を割いて熱心に関わってくれたあすびと福島の皆さまへ感謝申し上げます。皆さまとともに植樹した苗木が「同志社大学の森」となり、福島の地で力強く育っていくことを楽しみにしております。

(事務局・高等研究教育院事務室)
今回のNEWSは、以下の塾生が作成しました。
新島塾第3期塾生 松本さん(文学部)
新島塾第3期塾生 大野さん(文学部)
新島塾第3期塾生 山口さん(政策学部)
新島塾第3期塾生 木村さん(グローバル地域文化学部)
同志社大学新島塾「読書から始まる知の探究」福島フィールドリサーチ3日目
 4月6日(水)フィールドリサーチ最終日。本日は、小高工房の廣畑裕子さん、小高ワーカーズベースの和田智行さん、あすびと福島の半谷栄寿さんに講演していただき、対話を通じて学びを深めた。

 小高工房の廣畑さんは、震災後のコミュニティ再生に貢献し、現在は、人々に交流の場を提供しながら、小高区で栽培した唐辛子を販売している。廣畑さんのお話では、初めに、震災直後の交通状況、津波状況など、「あの日」の様子を語ってくれた。臨場感を伴う語りであり、塾生は当時の緊迫した状況を疑似体験できた。そして、廣畑さんが現在の唐辛子栽培にまで辿り着いた経緯を時系列に沿って語ってくれた。全体的に、廣畑さんの話からは、地域のつながりを再興し、地域に価値提供をするという意識が窺えた。
 小高ワーカーズベースの和田さんは、「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」というミッションの下、事業を行なっている。地震・津波・原発事故という不条理に襲われた後の地域づくりに関して、和田さんは、限りない可能性を感じており、予測不可能な未来を楽しむという精神で地域ビジネスなどを担っている。また、地域づくりに関して、小さくても多くの事業を根付かせることで、自立した地域社会・風土を養い、新たな不条理に襲われても、新たに立ち直れる地域を目指している。町づくりにおけるビジネスモデルを考える上で、非常に示唆のあるお話であった。
 半谷さんには、特に現代に求められるリーダー像に関して、自身のリーダーとしての長い経験を基にお話し頂いた。「普遍な志×可変な手段×思考を追求×実行の連続×煩悩を上回る誠実さ、が組み合わさることで賛同者が現れ、志が実現される。これからの社会に必要なリーダーは、以上のことを踏まえたリーダーだ。」と仰っていた。人々を巻き込むのではなく、人々が自らついていくという点に意義を感じられた。
御三方の全体講義の後、塾生が3グループに分かれて、より具体的な対話を行った。以下は、グループの代表者の感想である。

 廣畑さんとの対話では塾生が順番に質問した。
 人がつながる過程で大事な要素は何か、という質問には、「少しでも共通の話題を意識的に作るために、自分のアンテナをどれだけ高くはるかが重要」と話されていた。広島の豪雨を経験した塾生からは、災害を前に何もできない時、一歩踏み出すにはどうすれば、という質問が出た。廣畑さんはこれに対し「災害や戦争は明日の計画が全てなくなってしまう。けれど、今目の前にあることは自分で変えられる。ご飯をしっかり食べるなど、今日1日をきちんと生きることが大切」と仰っていた。自然と人間の共生について質問した時には、餌付けする人間がいなくなっても飛来地に訪れる白鳥を取り上げ、「自然は人間の考えているようにはならない、人間の側からだけでなく、自然の側から見ることがあってもいいのではないか」という趣旨の回答をいただいた。また、「地元への愛着」に関しての質問に対しては、人口の多い都心と少ない地域を比べながら、「地震がきたら、初対面でも隣の人と手をつながないと助からない。そんな時、誰か声をかけてくれる場所の方が安心」と、周囲との繋がりがある地元の良さを話されていた。
 廣畑さんの全体のお話を通して、自分と対話し、その上で人や自然に対してじっくり向き合っていくということの大切さを感じた。(松本)

 和田さんは、株式会社小高ワーカーズベースの他にも、一般社団法人パイオニズム代表理事、起業型地域おこし協力隊「Next Commons Lab 南相馬」事務局の管理運営等幅広く活躍されているリーダーである。そんな和田さんとともに、ビジネスの視点から本セッションのテーマである「都市の持続性」について議論した。
 40分にわたる対話を経て、和田さんは地域のつながりを重要視されているように感じた。コーワーキングスペースや、別業種の社会起業家同士が交流するNext Commons Labの管理運営に込める熱い想いを語って頂いた。中でもつながりに関して印象的だったお話は、たまたま食堂にやってきたガラス職人とのつながりから、ハンドメイドガラス事業アトリエiriser-イリゼ-が始まったというものである。小さなつながりから生まれる大きな可能性を和田さんのお話から感じることができた。
 ビジネスという要素は持続性に深く関わるテーマである。今後のセッションで、和田さんから得たヒントを最大限に活かしたいと思う。(山口)
 
 半谷さんとの40分間の対話では、このセッションの大きな目標である「都市の持続性について考える」から着想を得て、あすびと福島における持続性や人の連鎖について、塾生が事前に考えてきた質問を基に、議論を交わした。「大学生になって福島を出ていってしまう人材に福島に帰ってきてもらうためには?」という質問には、「あくまでも場づくりであり、強制はできない。その中で福島に向き合うフロントランナーが現れると憧れの連鎖が起こる。福島の創生は軸だが、そこからさらに日本の創生につながれば。」と話された。また、あすびと福島における先端技術の活用に関する質問については、「成長の場づくりのための手段であり、それ自体を目的にするつもりはない。」と本質を共有することへの強い信念を感じる返答をいただいた。あすびと福島で学ぶ層の震災経験の有無については、「モチベーションの向きの変化」という非常に興味深いお話をいただいた。東日本大震災を経験した層の「福島に貢献したい」という「戦時的」なモチベーションと、経験していない層の「楽しそう、先輩方がかっこいい」という「平時的」モチベーションは、最終的に同じ志に行き着く。それこそが「憧れの連鎖」だというお話しであった。
 対話を通じ、人材育成とその土地の持続性について、何かこちら側が仕組みやシステムを提供するのではなく、むしろ場所と理念の共有が重視されるという大きな発見ができた。(大野)

 最後の締めくくりとして、半谷さんを初めとするあすびと福島の代表者、服部先生、塾生が輪になって、各塾生が学んだことを言語化して発表した。一部の塾生の発表を紹介すると、「人によって復興中の町に対する印象が違った」、「震災と自分との距離感が初めてちゃんと理解できた」、「つながりを作る前に、自分と対話することが大事である」など、今回のフィールドワークでそれぞれが学んだことは多様であり、塾生は言語化を通じて、学びを自覚できた。今後の服部セッションにもつながる発表となった。

 今回の福島へのフィールドワークは、あすびと福島の全面協力の下実施された。福島の現状を体感できたことは、今後の学びにおいて、非常に有意義であった。
 最後になりましたが、福島を訪問するプログラムを提供し、時間を割いて熱心に関わってくれたあすびと福島の皆さまへ感謝申し上げます。皆さまとともに植樹した苗木が「同志社大学の森」となり、福島の地で力強く育っていくことを楽しみにしております。

(事務局・高等研究教育院事務室)
今回のNEWSは、以下の塾生が作成しました。
新島塾第3期塾生 松本さん(文学部)
新島塾第3期塾生 大野さん(文学部)
新島塾第3期塾生 山口さん(政策学部)
新島塾第3期塾生 木村さん(グローバル地域文化学部)
関連情報
お問い合わせ先
同志社大学新島塾(事務局 高等研究教育院事務室)
TEL:075-251-3259
FAX:075-251-3152
E-mail:ji-ktken@mail.doshisha.ac.jp
お問い合わせ一覧(部課所在・事務取扱時間案内)

さらに詳しい情報は株式会社 小高ワーカーズベースでご案内しています。

記事に出てきた和田さんが代表取締役を務めています。
小高区や南相馬市といった「地域」の抱える様々な課題を持続的に解決することに無限の可能性を見出し、チャレンジされています。

じぎょうしょ