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トピックス

同志社大学新島塾「合宿で鍛える知的基礎体力」 ~3日目~

2024年10月23日 更新

3日目の前半は理工学部の後藤琢也先生から「数学がなぜ必要か?——直感と数学」と題するセッションから始まりました。
【2日目の様子はコチラ】

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講義では特に中学校で習う「比例」の重要性が強調されました。実験をするときに、取得したデータを分析して、どのような振る舞いをしているかを検討しないといけません。このときに、最初に考えるのが比例の関係だと言います。例えば、まだ確立されていない高等な物理学の分野でも「『ながれ』が『力』に比例」という形でも表現されます。

とはいえ、データが完璧に比例関係をなしていることはほとんどありません。そこで、使うのが「微分」の発想です。実験データに基づく比例でないグラフも、細分化して微小な変化として捉えれば、比例の関係として扱うことができます。「実験屋は非常に基礎的な数学にしか相手にしてもらえない。学者でも中学レベルの基礎的な内容を侮ることはできない」と基礎的な数学の知識の有効性を学びました。

 「偏差」もデータを分析するにあたって、重要なツールになると後藤先生は言います。「偏差」とは個々の数値と平均値との差のことです。この、平均とのズレを見ることで、平均を取るだけではわからない、データの動きを見ることが可能になります。



 

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講義では、方眼紙にペンを数百回落下させ、中心線からのズレをプロットすることで、現実のデータが正規分布に近づくことを確認する実験を行いました。ある塾生は300回程度ペンを落下させ、データを分析したことで、現実世界での実験が数学の教科書に書かれている内容と関わっていることや自分の手でも実験できることの面白さを実感したそうです。

 佐藤先生からは「偏差値は偏っているということ。偏差値を追い求めることは偏っている人間を目指しているということになる。このように突き放して見てみるのが良い」と、偏差値競争に過剰に適応することの危うさについて警鐘されました。



 

 昼食の後、佐藤先生から2日目の千本先生の話に関連して、日本の国力と半導体の関係について補足がありました。佐藤先生によれば、世界にはゲームのルールを作れる国家と作れない国家があります。ゲームのルールを作れる国家はアメリカ、ロシア、中国などで、日本もルールを作れる国家の一つです。逆に、ドイツ、フランス、イタリア、イギリスはもはやゲームのルールを作る側にないと言います。日本は、半導体本体の技術面で台湾などに遅れをとっていますが、半導体製造の周辺分野では、日本が圧倒的に有利な部分があります。日本の世界における立ち位置を認識するには半導体についてきちんとわかっていることが重要です。国内政治、国外政治を必読の書籍として、太田泰彦『2030半導体の地政学(増補版)——戦略物資を支配するのは誰か』 (日本経済新聞出版) やクリス・ミラー『半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』(ダイヤモンド社)の2冊が紹介されました。



 

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3日目の後半と4日目(最終日)の前半には、幅広い分野で現在活躍している7名の新島塾OB・OGと佐藤先生に現役の塾生が質問をする形式のセッションが行われました。

 あるOBは現役の塾生に勧める本として、柄谷行人『帝国の構造——中心・周辺・亜周辺』(岩波現代文庫)をあげました。国際情勢の分析に役立ち、仕事にも生きているそうです。現役の学生の「学生時代に戻れるなら、何をするか」との質問に対しては「今の知識と経験を持って、学生時代にタイムスリップできるのであれば、相手のレベルに合わせて説明のレベルを変えることを心がけたい。役所は上司の許可をもらって仕事を進める。相手の知識、役職、要望、空気に合わせた交渉が必要となる」と答えてくださいました。

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他のOGは「新島塾の活動の中で、自分一人の力では知り得なことがたくさんあること、世の中でさまざまなことが繋がっていることに気づいた。知らない分野のことでも勉強して話を聞きに行かならない業界だからこそ、社会についてさまざまなことを知れる」と仕事の面白さを語りました。

記者をしているOBは「学生時代、筆力を身につけようと本を読んでいたが、実際に記者になってみて、筆力は必要ないと感じた。それよりも、質問力の方が重要で、勉強して、自分の中で話を組み立てて、具体的な質問をすることで、相手の方も話しやすいという環境を作ることが大切」だと教えてくださいました。

別のOGは「新島塾では自分で課題を見つけて追求していくことの重要性を学んだ。現在は、DXの提案やプロジェクト立ち上げを担当している。自分のいる価値は、お客さんから求められたもの以上の価値を提供すること。お客さんの課題を深掘りして、見えないニーズを探り当てることが必要。新島塾で学んだことが生きている」と語りました。



 

佐藤先生によれば、カール・マルクス『資本論』では、資本主義システムは分業と協業の体制になっているとの分析がされており、この世界に不要な仕事は存在しません。どのようにお金を稼ぐかも大切ですが、そのお金をどのように使うかを考えてほしいとアドバイスをいただきました。

後藤先生からは、新島塾はOB・OGや現在の4年生の実績を見れば、就職先が良い。「就職に有利になるから新島塾に入りたい」との声も上がっています。このまま、就職活動に有利であることを押し出したプログラムになれば、就職予備校の変種となるのではないか。新島塾の教師としては、様々な所に就職していただきたいが、新島塾での活動を、就職活動を有利に進める上でのコマにされたら困る。だから、「新島塾に来れば就職が良くなる」という評判はできれば立てたくない、とのお話がありました。

これに対し、OB・OGからは「新島塾では直接就活を扱うべきではない。すぐには役立たないが後から役立つものを学べる場であるべき。腰を据えて本を読んだことのほうが、就活に役立っていると感じた」との声があがりました。

(事務局・高等研究教育院事務室)


今回のトピックスは、以下の塾生が作成しました。
新島塾チューター 平山さん(法学部)
新島塾チューター 大倉さん(神学部)

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