トピックス
【新島塾】 塾生企画 「読書から始まる知の探究」 ~大井先生セッション~
1月30日、2月26日に文化情報学部文化情報学科 大井先生による塾生企画が行われました。
この塾生企画のテーマはDA(デジタルアーカイブ)と教育であり、様々なDAを用いた教育実践を学ぶと共に、自分自身でDAを用いた教材を作成することで現代教育の課題を考える機会となりました。
まず1月30日には、「問い」をひとつのテーマとして「AI」が台頭する現代における「問い」の重要性を再確認し、「答えの無い問い」に対するアプローチの方法、手段等を学びました。その中で答えの無い問に向き合うアプローチの手段としてDAを用いることで「これまでとは違う視点」「角度を変えた視点」で物事を考えられると学びました。
例えば「ヒロシマ・アーカイブ」は広島原爆の被爆体験を地図上にマッピングすることで爆心地と被爆者の位置関係が分かり、これまでとは違う3次元的な見方が広がりました。
2月26日には、DAを活用した模擬授業を行いました。準備段階では、まずテーマを設定し、それに関連する資料をDAで検索するところから始めました。キーワードやメタデータを工夫して検索することで、同じテーマでも異なる時代や地域の資料を見つけることができ、資料を比較したり、背景を考えたりする授業構成にしました。このような準備のもと、DAを活用した模擬授業をそれぞれが実施しました。
発表者1:「選挙権の拡大」
対象:高校3年生
選挙権が18歳に引き下げられた現在、高校生が学習者から当事者へと移行する段階にあることを踏まえ、歴史を通して制度の成り立ちを理解することで、現代の選挙を自分事として捉える視点を身につけることを目的としました。授業では、写真を用いながら、選挙権がどのように拡大してきたのかを時代ごとに確認しました。例えば、明治時代において、投票できる人が一定額以上の税金を納めた男性に限られており、当時の投票所の写真は、男性しか写っておらず、身なりを見ても、お金を持っていそうな人たちだということが分かります。また、模擬選挙を行い、同じ候補者であっても、投票できる人の条件によって結果が大きく変わることを実際に体験し、理解するワークを取り入れました。全体を通して、DAにある写真を用いることで、誰が写っているかだけでなく、誰が写っていないかにも着目し、その時代の価値観や社会のあり方を読み取ることができました。このことから、写真に写っていない人々や背景にある状況にまで目を向ける必要性をも改めて感じました。
発表者2:「気候変動と私たち」
対象:高校生~大人
1926年から2026年までの100年間で平均気温が約1.2℃上昇していることを起点に、パリ協定や京都議定書といった国際的な取り組みを資料を用いて確かめました。また、キリバスの事例や、バーチャルウォーター(仮想水)、スマートフォンと環境負荷の関係などを、写真やデータを用いて提示し、気候変動を多角的に捉える構成としました。授業を通して、DAは過去の資料をもとに問題を具体的に理解するうえで有効であり、視覚的な情報によって関心を引き出しやすいという点に気づきました。一方で、現代の気候変動に関する最新の資料はDA上では十分に蓄積されておらず、現在進行形の課題を扱う際には資料の不足が課題となることも明らかになりました。そのため、DAは過去から現在への流れを理解する基盤として活用しつつ、最新の情報源と組み合わせて授業を構成する必要性が示されました。
発表者3:「人々の生活の様子」
対象:中学生(テスト後の復習)
満州事変からポツダム宣言受諾までの人々の生活の様子を当時の写真を用いて授業を行いました。冒頭で時代ごとの主な出来事を簡潔に説明した上で、ワークをメインとしました。ワークでは、当時の写真をもとに、それぞれが①1931~1934年、②1935~1938年、③1939~1941年、④1942~1944年のどの時期に当てはまるかを考える内容でした。写真に写る人々の服装や表情、周囲の様子などから時代背景を読み取る必要があります。例えば、①には相撲や小学校の運動会といった比較的平穏な日常の様子、②には羽根つきや工場で働く姿、③には小学校の授業風景、④には傷痍軍人の運動会や街中の様子などが提示され、時代が進むにつれて生活の雰囲気が変化していくことが分かりました。教科書に掲載されている出来事だけでなく、当時の生活の姿を映し出す写真がDAには数多くあります。こうした資料を活用することで、歴史をより具体的かつ多面的に理解できることに気づきました。また、教科書だけでは見えにくい当時を生きた人々の姿に触れ、主体的に考える学びへとつなげることができました。
授業構成を考える過程では、どの資料を使うか、どのような問いを投げかけるかといった点を繰り返し検討しました。単に資料を見せるだけでは学びは深まらず、自ら考え、意見を共有できるような問いを設定する重要性を実感しました。また、同じ資料を見ても人によって着目点が異なるため、多様な解釈を尊重しながら議論することで理解が深まることにも気づきました。
一方で、DAには膨大な資料があるため、学習目標に沿って適切な資料を選ぶ難しさも実感しました。ICTやデジタル資料は便利なツールではありますが、それをどのように教育の中で活かすかは教師の工夫に大きく左右されます。つまり、DAは教育を支える重要な資源である一方で、その活用方法を適切に設計することが教育の質を左右すると言えます。
今回の模擬授業を通して、教育とは単に土台や基礎をつくり知識を伝えるだけでなく、資料や情報を手掛かりにして自ら考え、主体的に学びを広げていく力を育む営みであることを実感しました。DAはその学びを広げ、人と人、そして人と文化をつなぐ手段であり、今後の教育においても重要な役割を果たしていくと考えられます。
(事務局・高等研究教育院事務室)
今回のトピックスは、以下の塾生が作成しました。
新島塾第7期生 石田さん(社会学部)
新島塾第7期生 前野さん(政策学部)
| お問い合わせ |
高等研究教育院事務室 TEL:075-251-3259
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