ALL DOSHISHA 教育推進プログラム
2018年度 採択プログラム
ALL DOSHISHA論理的思考教育プログラム 産官学連携を中核としたキャリア形成プログラムの策定 安全・安心のための課題解決力をもった良心を手腕とする高度技術系職業人養成プログラム グローバルマインド養成を目的とした日本人学生と外国人留学生との共修プログラム ALL DOSHISHA サイエンスコミュニケーター養成プログラム |
安全・安心のための課題解決力をもった良心を手腕とする高度技術系職業人養成プログラム
事業者(学部・研究科)
理工学研究科
概念図
概要
高齢化やグローバル化の進展で,安全安心な社会の構築への要請はますます高くなっている。技術者としての安全安心への取り組みは高度な専門知識のみならず、安全に関する知識や法律・規格への理解と良心に基づく高い倫理観が求められる。本研究科内では2008年度大学院GP事業に基づき,全国に先駆け「安全技術者養成コース」を設置して安全安心の設計力をもつ技術者教育を行っており、修了者に学長名による修了証を発行している。本申請では、本コースを機械工学専攻から研究科内の全専攻へ展開し,さらに良心に基づく新しい理系教育のキャリアパスとしての実践的内容に発展させる。技術者倫理とリスクマネジメントを修得した後,国内外の主に企業の製造現場で当該コースの実践活動を遂行してキャリアを積む。英語講義も受講可能で海外での現場実習(希望者)と英語での発表を通してグローバル企業向けのキャリアも養成する。本プログラムの履修により,良心と「人のための科学技術」の人材像に基づく、技術者倫理と国際的視野をもった高度技術系職業人材を育成し、安全安心志向の高い産業へのキャリアパスを拡げる。大学院における協力企業群と協調した現場実習と有機的結合による教育アプローチは本学内の理系大学院生への波及効果が期待できるだけでなく,文理融合型の大学院生の新たな嚆矢としても発展が期待できる。
全体像・達成目標
原子力発電所の事故,航空機部品の上空からの落下、インフラ地中配管の劣化による陥没事故など重大事故が多発している。さらに近年は製造メーカーによる検査報告の不正などが発生し、倫理意識の低下が懸念される。このような事故や不祥事が続けばこれまで培ってきた日本製品に対する国際的信用や評価は低下し、強いては日本の国際競争力は低下していくだろう。また、団塊世代の大量退職時代を迎えて、技術者の経験不足も顕在化しつつある。熟練技術者は構造物の安全性を肌で感じて、危険予知ができるが、若い技術者にとって、安全安心な設計の概念と素養をベテラン技術者から教わる機会が激減している。さらに、環境汚染などの多発、都市環境や地球環境の激変などによって、人々の不安が高まっている。このような背景から、安全で安心な社会の構築が主要政策の一つとされて、それを実現するための科学技術だけでなく、法規制の強化の重要性が認識されている。企業や大学においても、労働安全衛生法、製造物責任法(PL法)への対応、毒劇物取締法やPRTR法(化学物質排出把握管理促進法)などによる化学物質管理の促進、放射性同位元素に関する法律などの様々な規制への対応が求められている。以上、安全・安心に関する背景をまとめると以下になる。
- (1)倫理意識の低下、熟練技術者不足による安全への技術力の低下
- (2)安全・安心な社会の構築に向けた法規制の一層の強化と尊守の必要性
本学の建学理念と理工学研究科の人材育成の目的をもとに、上記の課題を解決できる高度な技術系人材を育成するため、理工学研究科機械工学専攻では平成20年に文部科学省大学院GP「安全・安心の設計システム技術者養成課程」に申請して採択された。助成事業の終了後は後継事業として「安全技術者養成コース」を同専攻に常設して運営している。本コースでは本学の建学の理念および理工学研究科の目指す人材像に基づき、技術者倫理を兼ね備えて国際的視野に立って、安全安心の設計力と課題解決力をもった技術者を、講義とフィールド実習の両面から育成することを目的としている。安全安心を熟知した技術者を本学から輩出することは、本学の建学の理念にまさに合致するものであり、ディプロマポリシーを実質化していく質保証向上の一つの柱となることが期待できる。採択から9年間が経過したが、紆余曲折を経ながらも、関係教員の努力によりフィールド実習の場を提供する協力企業群も充実してきた。本申請プログラムは現行の安全安心コースをベースとしつつ、学内実践活動を拡充するとともに、理工学研究科内の全専攻にも拡大発展させたプログラムであり、これにより、広範な視点からのアプローチが可能となり、学生は複雑な問題の俯瞰力の醸成、ボーダーレス社会への対応力を身につけることができる。おもに以下の三つの柱からなる。
- (1)本プログラムのコース必修科目として「安全工学(英語講義)」と「リスクマネジメント」を継続設置する。2つの科目では,技術者倫理や法規制、危険予知活動、危険度の数値的評価手法や判断基準の構築などを安全一般に関する基礎知識を学ぶ。全専攻への順次拡大に対応して、情報、電気、化学、環境分野の安全についても内容を拡充する。
- (2)「フィールド実習」として、講義で得た知識の実践の場として国内外の企業等にて、危険予知やリスク管理、安全設計などの実践的な活動を行う。後日、報告書や開催される「合同報告会」で発表し、企業からのフィードバックを受けて、実社会のしくみや諸々の制約を体験し、将来に向けて安全への使命と志を持たせる。「イブニングセミナー」では企業から技術者を招き、企業の安全対策等の話題提供をしていただく。
- (3)高度技術系職業人として必要な学力を身につけるために各専攻設置科目群から一定の要件を満たすように履修する。偏りがないように履修させ、俯瞰力を養う。プログラム3年目には社会科学的なセンスを涵養するために、文系科目を設置する。
博士後期課程ではこれに加えて、国際報告会、プロジェクトマネジメント実習を通して、広い分野を網羅した安全・安心に関する実践の場を経験し、より高い総合力を身につけさせる。本プログラムの支援期間終了後の到達目標は安全安心を熟知したコース修了者を全専攻から、毎年100名輩出する。