トピックス
【新島塾】「読書から始まる知の探究」小山先生セッション ~北海道FW~
9月17日(火)〜19日(木)に「読書から始まる知の探究」小山隆教授(社会学部)のセッションの一環として、北海道でのフィールドワーク(FW)が実施されました。
1日目
【産業班】
産業班は、札幌ガイドの会様によるガイドツアーに参加しました。北海道旧本庁舎、時計台、テレビ塔を案内していただき、主に北海道開拓の歴史について学びました。都市整備や農地開発など、開拓にはさまざまな側面があり、多くの人々の試行錯誤や苦労によって現在の姿があることを知り、広大な土地の持つ歴史の深さを感じました。
【民族班】
民族班は、北海道大学アイヌ・先住民研究センターを訪問して、北原モコットゥナシ教授からアイヌ文化の教育についてお話を伺いました。北原先生は、現在のアイヌ文化に関する教育では、アイヌのようなマイノリティについては説明されているものの、それを「どう見ているか」というマジョリティについての視点が欠けていると指摘されました。多数派が無意識に行う差別(マイクロアグレッション)を防ぐには、多数派自身が自分たちの立場をよく理解する必要があると学びました。また、アイヌの歴史や文化の背景を知ることが、誤解を減らし共存に役立つことも教わりました。
2日目
【産業班】
株式会社カーム角山様を訪問しました。副社長の渡辺工さんが対応してくださり、実際の牛舎や搾乳機などを視察させていただきました。視察後、約1時間の質疑応答の時間を設けていただき、経営の観点から酪農に関わっている方のお話を聞き、興味深い発見の多い時間となりました。後日(10月5日)には、Web会議システムを通じて、社長の川口谷仁様とお話をさせていただきました。酪農を利益追求の手段と捉え、経営をシビアに考える姿がとても印象的でした。
酪農学園大学で循環農学類長を務める日向貴久教授にもお話を伺いました。日本の現状や世界で採られている政策など、酪農の今後について説明していただき、数字や政策といった客観的な観点から酪農のリアルを感じることができました。
【民族班】
札幌大学ウレㇱパクラブの理事である本田優子教授から、アイヌ文化の教育についてお話を伺いました。本田教授は「アイヌ文化を広めることが本当に望まれているのかも考えるべきで、まずは対等な立場で知り、語り合うことが大切」と教えてくださいました。また「多様性こそが大切であり、異なる価値観を持つ人々が共に成長することで、困難に立ち向かう力をつけることができる」とお話され、その考え方に深く共感しました。
午後からは、国立アイヌ民族博物館を擁するウポポイ(民族共生象徴空間)を訪れ、アイヌ文化に関する様々なプログラムに参加しました。ウポポイでは、アイヌの伝統芸能や楽器の演奏、伝統的な儀式などを実際に体験しながら学ぶことができました。アイヌ文化が自然と深く結びついていることや、その精神的な側面に触れることができました。しかし、現代ではアイヌ文化が過去のものと見なされがちであることや、無意識の偏見が教育の現場でも問題になっていることも知りました。そのため、アイヌ文化が今もなお続く生きた文化であり、これを正しく理解し伝える教育が重要だと強く感じました。
3日目
【産業班】
最終日は北海道農政事務所を訪問し、農業に関わる法改正や現在の政策などについてお話を伺いました。2日目の訪問先でも担い手の問題の深刻さについて触れられていましたが、行政の立場でもこれを強く問題視しており、農業を遠い存在のように感じる人が多い現状を改善したいとおっしゃっていました。国の機関として動く、大きな責任の伴う立場からのお話は、現場とは違う緊張感がありました。
【民族班】
ウレㇱパクラブに所属する大学生4名からお話を伺いました。2日目に訪問した本田先生が理事を務めていらっしゃるご縁で、今回現役の学生メンバーと交流する機会を得ました。ウレㇱパクラブはアイヌ文化を継承し、次世代に伝えることを目的に活動しており、「ウレㇱパ」(アイヌ語で「育て合い」の意)という精神に基づいて互いを尊重し合いながら学んでいる団体です。(https://urespa-club.com)
「無知・無関心であることが一番よくない」という言葉が印象的でした。アイヌ文化を知らないことや誤った理解が偏見を生む原因となるため、まずは知識を得ることが重要だと改めて感じました。また「アイヌ文化は友達の文化」とおっしゃっていて、アイヌ文化が特別なものではなく身近な存在として捉えるきっかけになるのではないかと考えました。
今回のFWでは、事前学習の段階から多くの方にご協力いただき、塾生からの質問やリクエストに真摯に対応していただきました。実際に現場で取り組まれている方々のお話は、書籍や映像だけでは決して得ることのできないものであり、塾生たちにとって貴重な学びとなりました。 塾生は今回のFWで得た学びに基づいて、10月19日の成果報告会に臨みます。
(事務局・高等研究教育院事務室)
今回のトピックスは、以下の塾生が作成しました。
新島塾第期塾5生 臼井さん(グローバル地域文化学部)
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