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トピックス

【新島塾】「読書から始まる知の探究」沖永良部島フィールドリサーチ1日目

2023年12月18日 更新

服部先生セッションの沖永良部島フィールドリサーチが11月3日から5日まで行われました。

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このセッションのテーマは「未来を思考する―進化を理解して探索する」です。これまで課題図書に関連した議論を通して学んできたことと沖永良部島で実際に見聞きしたことを踏まえて、フィールドリサーチ最終日の11月5日に中間報告会を行います。

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前日に鹿児島に到着し、3日早朝の飛行機便で沖永良部島に向かいました。この日の午前中は、奄美群島国立公園内にある「フーチャ」を散策ののち、昇竜洞を見学しました。フーチャとは、「潮吹き上げ洞窟」を意味する場所です。沖永良部島のサンゴ礁を形成する琉球石灰岩が隆起したのち、長い年月をかけて海水に浸食され洞窟状になったものです。雨風や波で浸食されてできた地形がみられます。ウミガメも訪れる場所とのことで、息継ぎのために海面近くにきたウミガメを見ることができました。昇竜洞は鹿児島県指定文化財・天然記念物に指定されている全長約3,500mにわたる鍾乳洞です。隆起サンゴ礁からできた石灰岩が地下水に溶かされてできたものです。昇竜洞付近では、普段見かけない黒い蝶や、南国風の植物が見られました。島の雄大な自然を感じる午前中になりました。

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午後は和泊町役場で、和泊町・知名町の役場担当の方々、酔庵塾塾長の石田秀輝先生、うじじきれい団の竿様ご家族にお話を伺いました。いずれも官と民双方の立場から脱炭素先行地域として2050年カーボンニュートラルに向けた取組みを主導、実践されている方々です。石田先生はカーボンニュートラルを実践することをゴールとするのではなく、その取り組みの先にある人々の意識を変え、持続可能な社会をつくることを目指して活動されています。その一助となる考え方として「バックキャスト思考」について教えていただきました。バックキャスト思考とは、未来から逆算して考える方法のことで、とくに不便さや不足を受容したうえで解決策を見出そうとするものです。「水が豊富にない環境下でお風呂に入る方法を考えよう」を例に、塾生はバックキャスト思考のトレーニングをしました。塾生から出た回答はどれも、「シャワーにする」「入浴頻度を下げる」など制約を排除することで問題を解決しようとするものでした。石田先生との対話の中で、「フォアキャスト思考」の癖がついていることを実感しました。石田先生は自然や動植物の在り方に目を向けることで、泡を用いたお風呂を考案されたそうです。自然からヒントを得ながら「少しの不自由さを受け入れ制約の中で楽しむ」という考え方を学びました。今回のテーマでもある『未来を思考する』上で大きなヒントになったように思います。

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うじじきれい団は、浜辺の漂流ごみを拾う活動を続けるきょうだいです。小学校の夏休みの作文のテーマが「環境問題」だったことがきっかけで、通学前の時間、朝6時から毎日ごみ拾いをしています。最初は「ごみのない砂浜を裸足で遊びたい」という思いで活動を開始しました。しかしごみ拾いを続ける中でマイクロプラスチックによる生物への被害を知ったことで「海の生き物を守りたい」という気持ちに変化したと聞きました。塾生からの「学校に行く前の朝早くに活動を続けられているのはなぜか」という質問には、いちばん年少である弟さんに「たのしいから」と答えていただきました。「やりたい」をきっかけとした純粋な思いに気づかされました。また、同じく団員であるお父様は「なんでも続けないといけないという風潮があるが、始めることが大切であるという考えで活動を見守っている。いつでも辞めてよいと言っているが、子どもたちは辞めようとしない。海の生き物を守るという自分たちにとって当たり前のことをしているだけという感覚なのだろう。」とお話しされていました。社会課題の解決に革新的な技術は欠かせません。しかし、「やりたい」という思いでできることからはじめ、行動に移す姿勢は同じくらい重要なものであると気づきました。

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役場の方々には「ゼロカーボン」を目指す町の取り組みについて伺いました。脱炭素を一つの手段ととらえ、いつまでも住み続けられる島を作ることを最終目標とした取り組みが行われています。公共施設だけでなく、軽トラックのEV化など、行政だけでなく住民と共に行う活動を行っていると伺いました。住民の方々の中では、世代間で多少のギャップはあるものの、近年では自然や環境を守る取り組みへの関心や意識があらわれたものが増えているとのことです。行政と市民がより近い距離で一体となって取り組む活動の一端に触れることができました。

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自然に触れ、島の取り組みについてお話を伺った初日は、人々のつながりやコミュニティの大切さ、島民の方の置かれている状況をよりポジティブにとらえ、楽しもうとする姿勢など、学びの多い一日となりました。夕食後、塾生は夜遅くまで5日の報告会に向けた準備に取り組みました。2日目は朝6時からうじじきれい団の皆さんとのビーチクリーンからスタートします。

(事務局・高等研究教育院事務室)


今回のトピックスは、以下の塾生が作成しました。
新島塾第3期塾生・チューター 織田さん(文学部)



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