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【新島塾】「合宿で鍛える知的基礎体力」1・2日目

'22年9月15日 更新
同志社大学新島塾「合宿で鍛える知的基礎体力」1・2日目

 新島塾の合宿「合宿で鍛える知的基礎体力」が9月2日から5日までの4日間、今出川校地にて対面形式で行われました。塾生の他、8名の学部1年次生が体験参加学生として参加しました。

 合宿1日目は、新島塾塾長である植木学長のセッションから始まりました。「戦争と文学」というテーマに焦点を当て、『平家物語』をテキストとして用いて講義が進められました。作中での描写や解釈だけではなく、史実と物語の関係性や、『平家物語』が後の作品にどのような影響を与えたのかについてのお話がありました。『平家物語』は有名な古典として、教育の場で教えられる事が多いです。しかし、多くの場合は作品の一部だけを切り取られているため、文脈が正しく共有されていません。植木学長は、作品の一部を切り取る事によって、読者が誘導される危険性を述べられました。それに関して、物語には多様な解釈があり「ただひとつの読み方」という考えに批判を抱くことの重要性を指摘されました。また「詰め込み教育は批判されがちであるが、ある程度の知識の詰め込みは必要」「オリジナリティを生み出すためには、教養が不可欠」というメッセージがありました。佐藤 優先生(本学特別顧問・作家)からは、「危機の時代をどう生き抜くか」というテーマの講義がありました。勉強を進める上で重要な考えとなるロジックやレトリックについて、さらにはナショナリズムや戦後と戦前の価値観の変遷などについてのお話がありました。さらに佐藤先生は、大学受験での偏差値教育を乗り越えて知識の欠損を埋めること、具体的には平日3時間・休日5時間は机に向かい勉強する習慣を身に付けることとのアドバイスをいただきました。最後に「同志社大学は国内や世界をみても高い水準の教育をしているし、学生の質も高い。その事を自覚して、中・長距離走的に学習すること」とのエールを送っていただきました。受講生は、セッション終了後も教室に残り、課題のレポート作成に取り組みました。また、佐藤先生に、勉強の仕方や自身の進路について相談をしている学生もいました。

 2日目の午前に行われた後藤 琢也先生(本学理工学部教授・学長補佐)セッションでは、16世紀中葉以降の科学史の変遷と科学技術が戦争に利用された歴史について学習しました。実験の系が数々の科学者によって確立されたことによって実際に「わかる」ということの背景には仮説があり、その仮説に再現性という要素があることについて学びました。科学は一人の科学者によって形成されてきたものではなく、さまざまな研究が同時期になされており、複数の研究者の知見が連綿と続き、新たに作り上げられていくものです。こうした流れは時に予期しない悪い方向へ働くこともあります。その典型例が、先の戦争で使われた大量殺戮兵器です。後藤先生にノーベル物理学賞を1903年に受賞したピエール・キュリーの受賞講演の一部を紹介いただきました。「ラジウムは犯罪者の手に落ちたら大変危険なものになるでしょう。自然の秘密を知ることが人類に利益を享受できるか、あるいはこの知識は有害なものになるのではないかという問題が提起されています。ノーベル(アルフレッド・ノーベル)の発見はこのよい例です。強力な爆薬によって私たち驚くべき事業をしてきました。またこれは人々を戦争に駆り立てる犯罪人の手に渡ると恐ろしい破壊の手段となります。私は、新発見が人類にもたらすのは益より害の方が大きいと、ノーベルとともに考える一人です。」と締めくくりました。アルフレッド・ノーベルも同様に、1866年に発明したダイナマイトがトンネル掘削工事を効率的に進めるという本来の目的ではなく、爆弾として戦争で利用されることに危機感を持っていました。その危機感は、約40年後の第一次世界大戦で現実のものとなってしまいました。
 私たち自身に置き換えて考えてみるとよくわかりますが、実際に40年以上も先のことを的確に予見することは非常に難しいことで、これは超一流の科学者であるから成し遂げられたものであると学びました。最後に「紹介したピエール・キュリーの講演は科学に限ったことではない。他の分野においても言えることで、超一流の人は専門分野を超えて共通する点がある。広い視野を持って専門外の分野を学ぶことは重要である。」というメッセージをいただきました。科学において重要である実験と理論の関係性や違いを学び、塾生は文理の垣根を超えて幅広く学ぶ必要について再認識しました。この合宿に体験参加している学部1年次生は、新島塾での学びと所属する学部での学びとの違いを知るきっかけになったことでしょう。これは、統合知の獲得を目指し新島塾に参加している学生にとって、非常に重要な学びとなったといえます。

 2日目の午後は、多久和先生に数学のセッションをしていただきました。塾生は合宿までに高校卒業程度の数学力を身につけるための事前課題が与えられており、はじめは事前課題の内容理解に関するテストから始まりました。テスト後は3期生が課題図書の中から割り当てられた分数、小数、微分積分学といったテーマについて、発表5分・質疑応答10分で講義を行いました。発表では4期生がファシリテーターを務め、体験参加学生も質疑応答に加わりました。塾生たちは事前に割り当てられたテーマについて歴史的背景も含め、分かりやすく講義することの理解を深める難しさを実感したようです。発表後は多久和先生から数学に関連する内容だけでなく、分かりやすく伝えるための発表技術や普段の学習姿勢についてフィードバックがありました。続いて、多久和先生に非ユークリッド幾何学についてお話しいただきました。ユークリッド幾何学とは、平面の図形の性質に関するものであり、物事は論理的な構成で出来ているという「論証的理性」、「合理的理性」に基づいた推論により論証する考え方をまとめたものです。対して、非ユークリッド幾何学とは、曲がった平面(常識とは異なる世界)の性質に関わるものです。最後に「古典的なものを全て暗記する必要はないが、出所(クラシック)を学ぶことは、古典を学ぶことと同じで、数学においては、ユークリッドの定義などは昔と変わらない」という他の先生のセッションと繋がるようなアドバイス、及びおすすめの書籍と数学の学びの必要性を交えてどのように数字を学ぶべきかといったアドバイスをいただきました。


(事務局・高等研究教育院事務室)
今回のNEWSは、以下の塾生が作成しました。
新島塾第2期塾生・チューター 西澤さん(生命医科学部)
新島塾第2期塾生・チューター 脇さん(文化情報学部)
新島塾第2期塾生・チューター 上野さん(グローバル・コミュニケーション学部)
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同志社大学新島塾「合宿で鍛える知的基礎体力」1・2日目

 新島塾の合宿「合宿で鍛える知的基礎体力」が9月2日から5日までの4日間、今出川校地にて対面形式で行われました。塾生の他、8名の学部1年次生が体験参加学生として参加しました。

 合宿1日目は、新島塾塾長である植木学長のセッションから始まりました。「戦争と文学」というテーマに焦点を当て、『平家物語』をテキストとして用いて講義が進められました。作中での描写や解釈だけではなく、史実と物語の関係性や、『平家物語』が後の作品にどのような影響を与えたのかについてのお話がありました。『平家物語』は有名な古典として、教育の場で教えられる事が多いです。しかし、多くの場合は作品の一部だけを切り取られているため、文脈が正しく共有されていません。植木学長は、作品の一部を切り取る事によって、読者が誘導される危険性を述べられました。それに関して、物語には多様な解釈があり「ただひとつの読み方」という考えに批判を抱くことの重要性を指摘されました。また「詰め込み教育は批判されがちであるが、ある程度の知識の詰め込みは必要」「オリジナリティを生み出すためには、教養が不可欠」というメッセージがありました。佐藤 優先生(本学特別顧問・作家)からは、「危機の時代をどう生き抜くか」というテーマの講義がありました。勉強を進める上で重要な考えとなるロジックやレトリックについて、さらにはナショナリズムや戦後と戦前の価値観の変遷などについてのお話がありました。さらに佐藤先生は、大学受験での偏差値教育を乗り越えて知識の欠損を埋めること、具体的には平日3時間・休日5時間は机に向かい勉強する習慣を身に付けることとのアドバイスをいただきました。最後に「同志社大学は国内や世界をみても高い水準の教育をしているし、学生の質も高い。その事を自覚して、中・長距離走的に学習すること」とのエールを送っていただきました。受講生は、セッション終了後も教室に残り、課題のレポート作成に取り組みました。また、佐藤先生に、勉強の仕方や自身の進路について相談をしている学生もいました。

 2日目の午前に行われた後藤 琢也先生(本学理工学部教授・学長補佐)セッションでは、16世紀中葉以降の科学史の変遷と科学技術が戦争に利用された歴史について学習しました。実験の系が数々の科学者によって確立されたことによって実際に「わかる」ということの背景には仮説があり、その仮説に再現性という要素があることについて学びました。科学は一人の科学者によって形成されてきたものではなく、さまざまな研究が同時期になされており、複数の研究者の知見が連綿と続き、新たに作り上げられていくものです。こうした流れは時に予期しない悪い方向へ働くこともあります。その典型例が、先の戦争で使われた大量殺戮兵器です。後藤先生にノーベル物理学賞を1903年に受賞したピエール・キュリーの受賞講演の一部を紹介いただきました。「ラジウムは犯罪者の手に落ちたら大変危険なものになるでしょう。自然の秘密を知ることが人類に利益を享受できるか、あるいはこの知識は有害なものになるのではないかという問題が提起されています。ノーベル(アルフレッド・ノーベル)の発見はこのよい例です。強力な爆薬によって私たち驚くべき事業をしてきました。またこれは人々を戦争に駆り立てる犯罪人の手に渡ると恐ろしい破壊の手段となります。私は、新発見が人類にもたらすのは益より害の方が大きいと、ノーベルとともに考える一人です。」と締めくくりました。アルフレッド・ノーベルも同様に、1866年に発明したダイナマイトがトンネル掘削工事を効率的に進めるという本来の目的ではなく、爆弾として戦争で利用されることに危機感を持っていました。その危機感は、約40年後の第一次世界大戦で現実のものとなってしまいました。
 私たち自身に置き換えて考えてみるとよくわかりますが、実際に40年以上も先のことを的確に予見することは非常に難しいことで、これは超一流の科学者であるから成し遂げられたものであると学びました。最後に「紹介したピエール・キュリーの講演は科学に限ったことではない。他の分野においても言えることで、超一流の人は専門分野を超えて共通する点がある。広い視野を持って専門外の分野を学ぶことは重要である。」というメッセージをいただきました。科学において重要である実験と理論の関係性や違いを学び、塾生は文理の垣根を超えて幅広く学ぶ必要について再認識しました。この合宿に体験参加している学部1年次生は、新島塾での学びと所属する学部での学びとの違いを知るきっかけになったことでしょう。これは、統合知の獲得を目指し新島塾に参加している学生にとって、非常に重要な学びとなったといえます。

 2日目の午後は、多久和先生に数学のセッションをしていただきました。塾生は合宿までに高校卒業程度の数学力を身につけるための事前課題が与えられており、はじめは事前課題の内容理解に関するテストから始まりました。テスト後は3期生が課題図書の中から割り当てられた分数、小数、微分積分学といったテーマについて、発表5分・質疑応答10分で講義を行いました。発表では4期生がファシリテーターを務め、体験参加学生も質疑応答に加わりました。塾生たちは事前に割り当てられたテーマについて歴史的背景も含め、分かりやすく講義することの理解を深める難しさを実感したようです。発表後は多久和先生から数学に関連する内容だけでなく、分かりやすく伝えるための発表技術や普段の学習姿勢についてフィードバックがありました。続いて、多久和先生に非ユークリッド幾何学についてお話しいただきました。ユークリッド幾何学とは、平面の図形の性質に関するものであり、物事は論理的な構成で出来ているという「論証的理性」、「合理的理性」に基づいた推論により論証する考え方をまとめたものです。対して、非ユークリッド幾何学とは、曲がった平面(常識とは異なる世界)の性質に関わるものです。最後に「古典的なものを全て暗記する必要はないが、出所(クラシック)を学ぶことは、古典を学ぶことと同じで、数学においては、ユークリッドの定義などは昔と変わらない」という他の先生のセッションと繋がるようなアドバイス、及びおすすめの書籍と数学の学びの必要性を交えてどのように数字を学ぶべきかといったアドバイスをいただきました。


(事務局・高等研究教育院事務室)
今回のNEWSは、以下の塾生が作成しました。
新島塾第2期塾生・チューター 西澤さん(生命医科学部)
新島塾第2期塾生・チューター 脇さん(文化情報学部)
新島塾第2期塾生・チューター 上野さん(グローバル・コミュニケーション学部)
関連情報
お問い合わせ先
同志社大学新島塾(事務局 高等研究教育院事務室)
TEL:075-251-3259
FAX:075-251-3152
E-mail:ji-ktken@mail.doshisha.ac.jp
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